副学長(法学部)
大津留 智恵子 先生
南博, 稲場雅紀著
SDGsの交渉過程の最前線に日本の主席交渉官として加わった南氏と、市民社会の一員として生活の場からMDGsに引き続きSDGs交渉に参加した稲場氏という、異なる立場からの共著により、SDGsの成り立ちが立体的に論じられている。COVID-19は地球が一つであることを否応なく認識させた。本書は、その事実に私たちが自分ごととしていかに建設的に対応していくべきかを考える上で、一つの材料となる。
岩渕功一編著
ダイバーシティ(多様性)推進とは、異なることが対等に認められる社会を目指すものです。ところが、制度化・構造化された不平等、格差、差別の問題を根本から解決しようとすると、既存の価値との対立を避けることはできません。本書はダイバーシティという心地よい言葉が、そうした対立的な側面を後景に追いやり、問題が隠されてしまう危険性に警鐘を鳴らします。ダイバーシティとは「マイノリティとみなされる誰か」の人権問題ではなく、まさに多様な社会で他者と共生する自分自身の人権問題です。ダイバーシティを自分のこととして考えることで、みなさん自身の価値観が変容していくことの大切さを語りかけています。
学長補佐(社会学部)
劉 雪雁 先生
草郷孝好著
ウィズコロナ・ポストコロナの時代において、どのような社会が望ましいのか。本書は、「心身の健康を維持しながら、社会的にも良好な状態にある」ウェルビーイングな社会の実現に取り組むべきだと提案する。また、従来型の経済成長モデル社会から経済・社会・環境の持続性を保つ循環型共生社会へ転換するには、トップダウン的に進めるだけではうまくいかず、市民一人ひとりが当事者として意識と行動を変える必要性も指摘している。
湯浅誠著
近年、「こども食堂」の認知度がかなり高くなったが、実際に行ったことのある人が少なく、イメージ先行で語られることが多い。本書は、現場取材に基づくルポルタージュを中心に構成されており、人間関係が希薄になった地域における新たな交流拠点としてのこども食堂の実態を描き出している。こどもの貧困対策だけではなく、コロナ禍で深刻化する社会的孤立を防ぐ対策を考えるためのヒントも与えてくれる一冊である。
橋爪紳也・杉本厚夫著
本学が第1回大会から協賛し続けてきた大阪マラソンは、日本最大規模の都市型市民マラソンの一つ。本書は、マラソン大会を単なるスポーツイベントとしてとらえるのではなく、ランナー、観客、ボランティア、スタッフなど多くの人が関わる大阪マラソンの魅力と意義を、市民スポーツ、チャリティ文化、都市創造の視点から読み解く。地域共同体のあるべき姿、都市生活におけるコミュニケーションの大事さを気づかせてくれる一冊である。
経済学部
良永 康平 先生
吉積巳貴 [ほか] 著
食品ロスやフードチェーン、食料自給率等の最近の食を巡る諸問題を、プラスチックごみや気候変動、生物多様性の問題を絡めて解説した総合的な学習書である。食についての現状を読み解くなかで、実は食の問題は他の環境問題とも大きく関連していることが実感できる良書である。
山崎康夫著
SDGsを説明しつつ、その目標を達成するために食品企業ができることをまず確認している。その上でやはり食品ロスの削減が重要であり、最大の課題であるとしている。最後に流行のフードテックや六次産業化、コオロギ、培養肉等の動向を紹介している。SDGs達成に向けた食の最新事情を知る上で有用な入門書である。
橋本直樹著
豊かで便利な食生活が戦後に実現された一方で、グローバル化した食料システムの限界が目立つようになり、食生活の無駄、食の安心、肥満等の生活習慣病、家庭内調理の減少等の問題が目立つようになった。本書はこれらの農と食に迫る危機を、社会学の観点から考察した書である。
政策創造学部
西山 真司 先生
キャロライン・クリアド=ペレス著 ; 神崎朗子訳
私たちの社会は、あたかも女性が存在しないかのように設計されているー。職場、医療、デザイン、災害などの場面ごとに多くのデータとエピソードを引きながら、身近な社会に存在するジェンダー不平等をあきらかにしているのが本書です。分厚いけれど読みやすいです。 この社会に“客観的に見て”もう女性差別なんて存在しないと言い張るその主張、本当ですか?
イザベル・アタネ, キャロル・ブリュジェイユ, ウィルフリエド・ロー編 ; 土居佳代子訳 ; セシル・マラン地図製作
日本で暮らしているとなかなか見えてこない世界全体でのジェンダー不平等を、カラーの地図とグラフで表現しているのが本書です。貧困や政治的な権利侵害だけでなく、身体や性生活などのプライベートな領域にいたるまで、女性の世界と男性の世界を対比的に示してくれます。
難しい本には手を出しにくいけれど、世界のジェンダー不平等に興味があるという人は、まず本書から始めてみるのはいかがでしょうか。
清水晶子著
そのものずばり「フェミニズムってなんですか?」を知りたい方におすすめなのが本書です。ただし、本書の目的は“正しい唯一の”フェミニズムの在り方を伝えるというものではありません。トピックごとに、フェミニズムはその問題に対してどんな態度表明をおこなってきたのか、フェミニストの意見がどのように分かれたのかも知ることができます。
ファッション雑誌のオンラインサイトで連載されたエッセイが元ですので、どこからでも読みやすいです。
人間健康学部
村川 治彦 先生
レイチェル・カーソン [著] ; 上遠恵子訳 ; 森本二太郎写真
60年前に「沈黙の春」で世に先駆けて環境破壊の実態に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソンは、人間が自然という力の源泉から遠ざかることへの解毒剤として「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」の大切さを訴えた。気候危機が年々悪化するなかで個々のSDGsを達成するだけでなく、自然と人間の関係を根本的に見直すことの大切さをこの本から読み取ってほしい。
荒昌史著 ; HITOTOWA INC.編
SDGs教育の核心は、身体で経験することを通してまずは自然への感性を磨き、先人が積み上げてきた生活の知恵にも学びながらSDGsを自分ごととして取り組むことにある。そうした活動を地域と連携しながら実践するための具体的な方法と豊富な事例を紹介している。
アリス・ウォータース著 ; 八須理明, 高橋良枝訳
米国カリフォルニア州バークレー市で始まった食育プログラム「エディブル・スクール・ヤード(ESY)」は、食べることといのちのつながりを学ぶ画期的な教育モデルとして注目され、現在全世界75カ国、5800カ所で実践されている。子どもたちが校内に作られた畑やキッチンで地域ボランティアとして参加する近隣住民らとの協同作業を通して生きものを育む責任感も身につける。
総合情報学部
瀬島 吉裕 先生
スティーヴン・ストロガッツ著 ; 長尾力訳
オーケストラには指揮者がいて、楽譜に沿ってシンクロしながら演奏を進めていく。ホタルは群れの中に指揮者がいないのに、完璧にシンクロしながら光を放ち出す。バラバラなリズムを刻むメトロノーム同士が、勝手にリズムを揃えてシンクロしていく。このシンクロという現象は、自然以外にも人の社会生活や科学技術に深くかかわっている。この書籍では、様々な自然現象を「シンクロ」という視点で解き明かしていく。
社会安全学部
桑名 謹三 先生
伊藤和子著
有名ブランドのファッションアイテムの多くは、途上国の下請け工場で作られている。本書は、筆者が所属する国際人権NGOの調査に基づき、バングラデシュ、中国、カンボジアの下請け工場の過酷な労働環境を報告している。また、そのような過酷な労働環境を改善するための、有名ファッションブランドや国連などの取り組みも解説されている。最後に、問題を改善するために、一般消費者がどのように対応すれば良いのかも示されている。
『アカデミアが挑むSDGs』を読もう!
KANDAI for SDGs推進プロジェクト編
今年の3月に関西大学から 『アカデミアが挑むSDGs』(KANDAI for SDGs推進プロジェクト[編]) が出版されました。 この本では、各学部の先生方が様々なアプロ―チでSDGsについて提案しています。 ぜひ、皆さん手に取って読んでみてください。