2020/7/29UP
こんにちは。ILL係です。
今日は、よく複写依頼のある文芸作品の話をします。
大正14(1925)年1月1日発行の雑誌「青空」創刊号には、梶井基次郎の「檸檬」が掲載されています。
これが「檸檬」の"初出"、つまり、はじめて発表された雑誌です。
当館の資料は復刻版ではありますが、帙入りで装丁された300部の限定版で、No.163のナンバリングがあります。
この雑誌は、いわゆる同人誌で、梶井基次郎が25歳のときに学生時代の仲間に声をかけて出版しました。
印刷代が高かったため、知り合いのつてを使い、岐阜刑務所の作業部で安く印刷をしてもらったそうです。
創刊号の奥付をよく見ると、「岐阜刑務所作業部」の文字があります。
第2号までは同じ岐阜刑務所の作業部で印刷を行い、
「一号と二号の活字が磨滅しているのは、刑務所の印刷だからである。」 (「評伝梶井基次郎」大谷晃一著, 河出書房新社, 1978)
と評伝にも書かれるほど。第3号以降と比べてみると、
確かに文字のかすれが多く見られ、行間や字間も異なります。
本をじっくり見てみると、このような意外な発見に出会うことがあります。
図書館に立ち寄る機会があれば、ぜひ手に取ってよくよく観察してみてください。〔S〕
◆書誌詳細
青空
複刻版. -- 1巻1号 (大14.1)-3年6号 (昭2.6) = 1 (大14.1)-28號 (昭2.6). -- 日本近代文学館, 1925.
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