2023/11/29 UP
こんにちは、ILL係です。
急に寒くなりましたね。
さて今回は、複写中にこんな気になる文字を見つけました。
"日本標準規格A5判"
「婦人之友」33巻4号, 1939, 奥付
「婦人之友」は何度も複写していますし、
雑誌の奥付は毎日飽くことなく見ていますが、
こんな文言を見たのは初めてで、何やら妙な違和感を感じます。
本のサイズが規格通りであることを、これほど大きく記載する必要があるのでしょうか。
気になったので、調べてみました。
図書館には調べるツールがたくさんありますので、
まずは頼れる辞書・事典データベースの
「ジャパンナレッジ」で"日本標準規格"と検索しましたが、
なぜかヒットしません。
続いて「朝日新聞クロスサーチ」で検索。
2006年11月17日に、"用紙サイズのA、Bって何"という記事がヒットしました。
記事には、
日本工業規格(JIS)の前身の日本標準規格
とあり、日本標準規格は、JIS規格の昔の呼称だとわかります。
さらにこの記事には、
1929(昭和4)年にAとBの判型が決まった
とあるのですが、気になった奥付は1939(昭和14)年のものです。
十年前に決定したことを、わざわざ喧伝する必要があるのでしょうか??
まだ腑に落ちません。
そこでさらに朝日新聞をさかのぼってみると、
1938(昭和13)年9月4日の紙面に、
"小雑誌は節約御免 きのう紙2割減通牒"
という見出しの記事を発見しました。
その記事によれば、国が雑誌協会に対し、紙使用量の節約を要請し、
さらに大きさを日本標準規格にするよう通達したとのこと。
規格を統一することで原料となるパルプの節約になるそうです。
なるほど。さっそく「婦人之友」が並ぶ書架に行くと、
1939(昭和14)年1月号からほんの少し小さくなっています。
1939年は、第二次世界大戦勃発の年です。
どうやら奥付の文字は、"節約していますよ"というアピールだったようです。
書庫を探すと、戦時中に判型を変更した雑誌がたくさんありました。
わかりやすい例では「週刊朝日」が大幅サイズダウンしています。
表紙には"新体制規格版"とあり、戦時の様相が伝わってきます。
「週間朝日」38巻16号, 1940, 表紙
世界ではいまだ戦争があちこちで起こっています。
節約要請はなくとも、燃料高に物価高と、
私たちの暮らしにもじわじわと影響を与えています。
本や雑誌がいつも通り発行されるよう、学生や研究者が学び続けられるよう、
切に平和を願ってやみません。〔S〕
◇今回紹介したデータベース
ジャパンナレッジ
https://opac.lib.kansai-u.ac.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/786/ccd802552f34c15bd738440d747caab9?frame_id=366
朝日新聞クロスサーチ
https://opac.lib.kansai-u.ac.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/786/4717236ad1bde974b51455fc22e8fc3b?frame_id=366
◆書誌詳細
「婦人之友」1巻1号 (明41.1)-. -- 家庭之友社, 1908
「週刊朝日 = The Asahi weekly edition」1卷5號 (大11.4)-128巻27号 ('23.6.9). -- 朝日新聞社, 1922