2024/4/4 UP 最終回
こんにちは。ILL係です。
今回も書庫で見つけたちょっと面白い資料を紹介します。
(街能噂 / 平亭銀鶏撰 ; 歌川貞廣画 ; 巻1. -- 鶴屋喜右衛門 河内屋太助等3肆, 1835, 表紙見返し)
平亭銀鶏(へいてい-ぎんけい)という江戸時代の戯作者が書いた滑稽本
「街廼噂(ちまたのうわさ)」です。
滑稽本は日常生活のおかしさを描写した江戸時代の小説の一種です。
「街廼噂」とは、どんな話なのかというと、第4巻の巻末にはこのように書かれています。
"此書は江戸と大阪の風土のちがひたることを、事こまかに論じたる書なり"
(街能噂 / 平亭銀鶏撰 ; 歌川貞廣画 ; 巻4. -- 鶴屋喜右衛門 河内屋太助等3肆, 1835, 十七丁表)
小説の中では、江戸から大阪に観光に来た旅人が
大阪の人に町を案内してもらいながら生活の違いを紹介していきます。
何が比較されているか、少し見てみましょう。
(街能噂 / 平亭銀鶏撰 ; 歌川貞廣画 ; 巻4. -- 鶴屋喜右衛門 河内屋太助等3肆, 1835, 十三丁裏-十五丁表)
こちらでは、家庭の台所まわりの違いが紹介されています。
例えば、大阪のまな板は平らで脚が4本ついていますが、
江戸のまな板は湾曲していて下駄のような脚が2本ついています。
鍋につるが付いているかどうかも、江戸と大阪で違いがあります。
(街能噂 / 平亭銀鶏撰 ; 歌川貞廣画 ; 巻4. -- 鶴屋喜右衛門 河内屋太助等3肆, 1835, 十丁裏‐十一丁表)
他には、人参や大根など野菜の味やサイズにも違いがありました。
江戸時代の大阪の大根は、江戸で作られる蕪のように丸みを帯びて短く、茎は長かったようです。
(余談ですが、左ページで吹田市の特産品である「吹田くわい」が紹介されていました。)
現代でも、東京と大阪を比較するテレビやSNSを目にします。
例えば、エスカレーターの立ち位置、ファストフード店の略称の違いなどがありますが
江戸時代の頃から生活文化の違いを比べていたのは面白いですね。
今回紹介したもの以外にも、いろいろ比較されているようです。
ぜひ原本でご確認ください。〔Y〕
◆今回紹介した資料
街能噂 / 平亭銀鶏撰 ; 歌川貞廣画 ; 巻4. -- 鶴屋喜右衛門 河内屋太助等3肆, 1835.
◆くずし字は難しい、という方はこちら。翻刻をどうぞ。
風俗 / 船越政一郎編 -- 浪速叢書出版會, 1927. --(浪速叢書 / 船越政一郎編; 第14).
らいぶらりログは今回で最終回となります。ご愛読ありがとうございました。
現在、新シリーズを準備中です。またお会いできる日を楽しみにしております。
ILL係が、作業中に見つけた興味深い資料や、図書館の様子を不定期でレポートするブログ形式のガイドです。
過去のらいぶらりログもPick Up しています。お楽しみください。
閲覧数ランキング ベスト3
わたしたちの推し記事
図書館資料マニアクイズ
各種サービスの最新情報は図書館ウェブサイト でご確認ください。
らいぶらりログは、3名で執筆しました。
S
著作権とルールに厳しい、ILL係の鬼。資料を手に取るとつい奥付を探してしまう。
Y
現物よりも美しくコピーが取れるその技は、職人の域。関大歴の長いベテラン司書。
E
閲覧係からILL係へ異動してきた若手のホープ。チームに新しい風をもたらしている。