奥付に貼られた切手の秘密 |
2022/06/21 UP
こんにちは、ILL係です。
学外相互利用では、他大学からの貸借の申し込みも受け付けています。
相手が探している図書と、関大が持っている図書が同じ資料かどうかは
主に奥付の書誌情報(タイトル、著者名、発行年月日など)を見て判断します。
このとき、発行年が古い和書の奥付に
切手のような紙片が貼られているのを見かけることがあります。
(「仮面の告白 」 三島由紀夫著, 再版., 河出書房, 1950, 奥付. )
奥付に切手が貼ってあるの?なんのために?と疑問に思うことがありましたが
これは切手ではなく「検印紙」と呼ばれるものです。
検印紙は、著作権等の責任の所在を明らかにするために、
そして発行部数の確認のために使用されていました。
著者は発行部数に応じた著作権料(印税)を受け取るので
不正を防ぐために、著者が印紙1枚1枚に検印を押して
それを発行所が奥付に貼っていました。
検印紙のデザインは発行所によって異なります。
シンプルなものから凝ったものまで様々で、見ているだけでも楽しめます。
関大で所蔵している和書の中から、いくつか検印紙を探してみました。
(スライドの画像をクリックすると別ウィンドウで所蔵情報が開きます)
この検印の制度が廃止になった年は、はっきりとは分かりませんが
1960年代には廃止されたようです。
廃止後に出版された和書の奥付を開いてみると
「検印省略」や「検印廃止」などが印刷されています。
しかし、最近の奥付ではこの「検印省略」の印刷すら少なくなりました。
(左)「砂の女」 安部公房著, 新潮社, 1962, 奥付.
(右)「石川啄木の文学」上田博著, 桜楓社, 1987, 奥付, (近代の文学 ; 18).
現在もこの検印制度が続いていたら....
8,000部の検印でも大変な作業なのに、
100万部超のベストセラー小説をすべて手作業で検印するとなると
考えただけで手が痛くなってきそうですね.....。〔Y〕
◇KOALAの使い方はこちら
https://kansai-u.libguides.com/c.php?g=753402
◇雑誌の奥付についてはこちら
https://kansai-u.libguides.com/c.php?g=931694&p=6881450
■参考資料
岩切 誠, 「奥付検印への思い入れ:山田正平の刻印を中心として」, 『書論』, 2016, 第42号, p.260-273.
「検印」, 『出版・印刷・DTP用語辞典』, レイアウトデザイン研究会編, 2001, p.94.