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らいぶらりログ ―ILL係の見た図書館: 文庫本のしおり紐(スピン)を観察する

日々、文献のコピーと貸借本の発送にいそしむILL係が、作業中に出会った魅力的な情報をレポートします。

文庫本のしおり紐(スピン)を観察する

2021/6/3UP

緊急事態宣言が延長されましたが、図書館は引き続きサービスを限定して開館中です。

ILL業務はおかげさまでたくさんの申込があり、日々もくもくと作業をしております。

 

さてそんな状況ではありますが、今日は、文庫本のしおりについて話をします。

 

本についている紐でできたしおりを、スピンと呼んでいます。

単行本ではよく見かけますが、文庫本ではコスト削減のために廃止が続き、

今では、スピンがあるのは新潮文庫のみになってしまいました。

 

でも図書館の蔵書には、"文庫本にスピンがついていた頃の本"がたくさんあります。

こちらは、岩波文庫の棚です。

 

岩波文庫が創刊されたのは1927(大正16)年。国内初の文庫の創刊といわれています。

スピンをつけるため、天アンカットという本の上部分を裁断しない方法で製本するのですが、

「初めの頃は、技術的に研究不足であった為に、1分も2分も凸凹になる位の不揃いであった」 1

と略史に記載の通り、創刊当時は紙の大きさがバラバラだったようです。

その頃の資料を見てみると、


(「新訓万葉集」佐佐木信綱編 ; 下巻. -- 岩波書店, 1927)

たしかに、かなりはみ出しています。

 

スピンつき文庫本を広めた岩波文庫ですが、1970(昭和45)年5月、ついにスピンを廃止します。2

当館にあるマルクスの資本論は、廃止前後に受入されたため

全9巻のうちスピンのあるものとないものとが混在しています。

初版揃いではないので、2巻は4刷スピンなし、3巻は1刷スピンありと不揃いです。

 

さて最後に、当館所蔵の岩波文庫について。

関西大学図書館では、岩波文庫を継続して受入しております。

刊行年が新しいものは、開架や分館に所蔵があるので自由に手に取ることができ、

昭和20年代以降に受入されたものは、総合図書館B2書庫の電動書架にまとめて配架されています。

書架の間に立つと、岩波文庫がずらっと並び、眺めは壮観。

用事がなくてもついつい立ち寄ってしまいます。

 

こんなふうに、身近な資料から広がる図書館の世界があります。

皆さんも来館したらぜひ、図書館の"ちいさなツボ"を探してみてください。〔S〕

 

◇電子ブックで読める岩波文庫もあります。(こちらには、しおりという"機能"つき)
岩波書店「現代人の教養」200冊
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/SeriesDetail/Id/3000074330?5 別ウィンドウで開く
※学外から利用する場合は、学認でのログインが必要です。

◇書庫の入庫資格について
https://kansai-u.libguides.com/c.php?g=753401&p=5396987#s-lg-box-wrapper-20047639

◆紹介した資料の書誌詳細
新訓万葉集
佐佐木信綱編 ; 下巻. 岩波書店, 1927
 別ウィンドウで開く

資本論
マルクス [著] ; エンゲルス編 ; 向坂逸郎訳, 岩波書店, 1969
 別ウィンドウで開く


■1,2
「岩波文庫の80年」p.396,416, 岩波文庫編集部編. 岩波書店, 2007  別ウィンドウで開く 

 

このガイドの作成者

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図書館  ILL係
ILL係とは、「学外相互利用(ILL)」業務を一手に引き受けている、図書館の中のセクションのひとつです。 もっと気軽にILLを活用してほしいという思いを込めて、いろいろな角度からILLの便利さ、奥深さ、コツ、ツボを、皆さんにお伝えいたします。